先日、小雨の降る中、札幌市時計台2階で開かれた、南佳孝さんのソロライブに行ってきました。
札幌の時計台の2階がコンサートホールになるなんて——そんな驚きと、「南佳孝の生演奏を次いつ見られるかわからない」という思いが重なり、衝動的にチケットを購入。
ちょうど先月、「最近、南佳孝のCDやレコードをお店で見かけないね」と家族で話していた矢先に見つけたライブ情報。
行かないわけにはいきませんでした。
南佳孝さんは、1973年9月21日、作詞家・松本隆プロデュースのアルバム『摩天楼のヒロイン』でデビュー。1979年発表の『モンロー・ウォーク』は、郷ひろみさんによって『セクシー・ユー(モンロー・ウォーク)』としてカバーされ大ヒット。そして1981年、片岡義男の短編小説を映画化した『スローなブギにしてくれ』の主題歌として書き下ろした『スローなブギにしてくれ(I want you)』が大ヒット。サウンドトラックも手掛けるなど、シンガーソングライターとして確固たる地位を築きました。
彼の音楽は「古い歌」と呼ぶにはもったいない。
時代の流行に流されず、ジャズ、ウエストコースト・ロック、サーフィン・サウンド、デジタル・ポップなど、アルバムごとに異なる世界観で一つの映画を見せてくれるような構成美があります。
それもそのはず——
作詞は松本隆、アレンジには坂本龍一が携わる楽曲も多く、日本のポップス史の中でも特別な存在感を放っています。
午後7時。時計台の鐘の音が鳴り響くと同時に、南佳孝さんが登場。
静かなチューニングから始まるその空間には、雨の音、救急車のサイレン、街の気配までもが混じり合い、まるで映画のワンシーンに迷い込んだような緊張感がありました。
初めて生で聴いて感じたのは、「一人で演奏しているように聞こえない」ということ。
ギター一本の演奏なのに、そこには確かなビートがあり、バスドラム、スネア、シンバルが呼吸しているかのように響いていました。
観客全員が同じリズムで揺れ、メロウなナンバーではまるでチークダンスを踊るように“ノッて”いたのが印象的でした。
「今年の夏は本当に暑いね」と南さん。
「いつもは秋の気配がする9月に歌う曲なんだけど、今日はやっと北海道が少し涼しくなったから」と披露されたのは、『月に向って』。
作詞はもちろん、松本隆。
やさしく包むギターの音と声に、夏の終わりの風が重なりました。